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Lee-Byung-hun addicted

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第4話

「釜山に行っちゃった」 第4話




両親の車に乗り込むとビョンホンと揺の間に女の子が座った。

明らかに不機嫌そうな揺を見て噴出しそうなビョンホンは女の子に尋ねた。

「名前はなんていうの?」

「スヨン」

何だかますます納得がいかなくなってくる。

揺は泊めてもらうことにしたことを後悔していた。

「結婚してどれくらいなの?お子さんは?」

二人が夫婦だと完全に思い込んでいる母親は、

ためらうことなくそう尋ねた。

「いや、あのそうじゃなくって・・」

と言いかける揺の言葉を遮るようにビョンホンが答えた。

「結婚してちょうど1年なんですよ。

今回は記念旅行で。子どもはまだです。ははは。」

「じゃ、まだ新婚さんだね。うらやましい」

ビョンホンは揺を見てにんまりと笑った。

(またぁ~。もう寿命が縮まるわ。)

困った顔をしていると、真ん中に座っている女の子が不思議そうな顔で揺を見ていた。

揺は実は子どもがあまり得意ではない。

何か心の中を見透かされるような気がするし、

子どもの頃から大人っぽく扱われてきた揺は、

実のところどうやって子供の相手をしたらいいのかわからなかったから。

女の子の不思議そうな表情を見てうそを見抜かれそうになったかと思った揺は明らかな作り笑いを彼女に向けた。

ビョンホンにしがみつく彼女。

「やっぱ納得できないなぁ~」

ビョンホンはそんな揺を見てずっと笑いをこらえていた。

「ねえ、だんなさん、あの映画俳優のなんていったっけ?」

「イ・ビョンホンですか」

「そうそう、似てるって言われるでしょ~。

そっくりだもん。ねぇお父さん」

(自分から言ってどうするのよっ!)

揺は心の中で叫んだ。

全く寿命が縮まる旅だ。

「そういえばお名前は?」

「あ、失礼しました。

僕はチョン・ウシク。

妻は日本人なんです。揺といいます。」

「いやぁ~奥さん日本の人かい。

ハングルが上手なんで全然わからんかったわ。

ねぇお父さん」

「私らは、キム・ジスとヒョンジャ。

スヨンは年が行ってから偶然できちゃった子だから

まだちっちゃいんだけど、他の子はみんな独立しているのよ。

何だか恥ずかしいわね。ははは。よろしくね。」

妻のヒョンジャはそう言った。

「お住まいは?」

「ソウルです。」

「あっ、そう。どのへん?」

答える前に車はヒョンジャの家に着いた。

古い昔ながらの民家だった。

「むさ苦しいところだから遠慮しないで入って」

チスはそういうと部屋に案内してくれた。

こじんまりとした温かい感じの部屋だった。

「夕飯まだでしょ?スヨンはお母さんのお手伝いだ。

ここでちょっとゆっくりしていてください。

食事の準備ができたら声かけますから」

そういってチスは渋るスヨンを連れて部屋を後にした。

「記念すべき初めての二人だけの夜だね。」

ビョンホンは揺の耳元でささやくとゲラゲラと大笑いした。

「あ~面白い。最高の旅だよ。」

ビョンホンはオンドルで温かくなった床に大の字に寝そべると、うれしそうにそう言った。

「何が最高よ。

もう私寿命がどんどん縮まって、

あなたより先に逝っちゃいそうだわ。」


そういいながらも嬉しそうなビョンホンの顔を見ると、

揺もまんざらでない楽しい気分になった。

「それは困るな。おいで」

そういうとビョンホンは自分の隣に揺を座らせた。

「怪我大丈夫?ちょっと見せてごらん」

「大丈夫よ。ちょっとぶつけてすりむいただけだから。」

確かにさほどひどい怪我ではなさそうだった。

軽いかすり傷程度。

「あとでお風呂に入ってから薬つければ大丈夫かな。

それまでの応急処置だ」

そういうとビョンホンは揺の右ひじに軽くキスをした。

「痛いの痛いの飛んでけ~」

そういうと彼はにっこりと笑った。

揺はこの上なく幸せだった。

そしてやっと少し納得できた気分だった。

「じゃ、長生きしちゃおうかな~」

揺はそういうとビョンホンの肩に頭を預けた。

そしてふたりの影がひとつになった・・・かに見えたその時

「オッパ~。嫌いなものないかって」

・・・といいながらスヨンが部屋に入ってきた。

現場を目撃されてばつの悪い二人は、

不自然に離れて荷解きを始めた。

「好き嫌い?あっ、ないよ。全然。なんでも大丈夫。揺もだよね。」

ビョンホンは慌ててそう答えた。

「ああ。うん。」と揺。

怪訝そうなスヨン。

揺はいたたまれなくなり

「ちょっと食事の用意手伝ってくるわ。スヨン案内してくれる?」

と言いながら後ろ髪をひかれつつ部屋を後にした。

ビョンホンはそんな揺を苦笑いしながら見送った。




「これ、美味しい~。」

ヒョンジャの料理はどれも美味しかった。

特にケジャンは絶品だった。

「そう、喜んでもらえてよかったわ。」

「しかし、あんたイ・ビョンホンにほんとそっくりだねぇ~」

「よくそう言われるんですよ。」

顔色を変えることもなく、ビョンホンはケジャンをほおばりながらそう答えた。

「わたしねぇ~あのドラマ好きだったのよ。

あのお正月お父さんに孝行するやつ。」

「遠い路ですね。」

そのドラマが大好きだった揺はうかつにもすぐに反応してしまった。

「そうそう、あの主人公ねぇ。

いい子でさぁ~。あんな婿さんがいいわよねぇ~。あんた。」

そう、話を振られたチスは、ニコニコ笑って相槌を打ちながらビョンホンに酒をすすめた。

「あんたも奥さんも同じくらいいい人だよ。

えっと・・・あの主人公なんて名前だったっけ。

奥さん覚えてる?」

そう言われて揺はしまったと思った。

ビョンホンがさっき面白がって自分の名前をチョンウシクだと名乗ったことを思い出したから。

「いやぁ~忘れちゃったなぁ~。

それよりこれどうやって作るんですか?」

必死で話をそらそうとする揺を見て、ビョンホンはまた笑いをこらえている。

何とかその場は乗り切り、食事が終わる頃ヒョンジャが言った。

「お風呂一緒にどうぞ。」

「!」揺とビョンホンは合わせたように二人でお茶を口から吹き出した。



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